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なってきます。
また、一般に刺激の強さと時間的長さが要求されるようになります。
さらに、最近の出来事に対する記憶力が減退する外、新しいことへの理解力が低下してくる反面、認識力や判断力、推理力などは、わりあい低下せず、総合力はかなり高年齢まで増加するといわれています。
これらの機能の変化は個人差が著しく、同じ年齢の人を比べてみてもバラツキの大きいことが特徴です。
そのほか、加齢による身体的変化として、二十〜二十四歳時の能力を基準とすると、五十五〜六十歳の人では、筋力では握力、背筋力が二十〜二十五%、脚伸展力で四〇%、関節可動域では脊柱で一〇〜一五%、肩関節では三〇%、感覚・平衡機能では四〇〜六〇%、反射機能では一五〜二〇%、運動調整機能では四〇%、消化吸収機能では五〇%、抗病力・回復能力では三五〜七〇%が低下するそうです。
加齢による心身の変化を統合したものが労働能力の加齢現象として現れてくるのです。
イギリスの学者「ヘロン」は中高年齢労働者の就業上、特に作業適応という点で留意すべき身体諸機能の変化を、
「筋力の低下」、
「行動の緩徐化」、
「聴力、視力の低下」、
「最近の出来事に対する記憶の劣化」、
「複雑な仕事に対する習熟の遅れ」、
の五つにまとめています。
身体的労働能力を総合的にみれば、二十五歳くらいをピークにして、経年的変化で能力は緩やかに減退し、六十歳で平均でその三分の二になると考えられています。
従って高齢者については作業強度の弱い作業に就かせるべきです。
早いスピードの流れ作業などは一般的に不向きと考えられています。
この労働能力の変化に注意を払い、作業に修正を加えることによって、労働の生産性についても、若年者と著しい差の出ることがないようにされているのが近代工業の通例になっています。
判断力、自主的に物事を進める能力、正確さ、より強い責任感など、若年層より優れた面が加齢による心身の変化をカバーすることで、生産性に差が出ないのです。

 

 

 

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